広いとも狭いともつかない駐屯地の庭を眺めていると、なんだか無性に聞いてみたくなった。
誰かに無性に尋ねてみたくなった。

目の前の庭の片隅では、今日も今日とて山崎がミントンで遊んでいる。よく飽きないなぁ。それより仕事をしなくていいのか、また、鬼の副隊長にどやされるぞ。




「山崎ぃ。」

「はいいぃぃぃ!」


ほら。
ちょっと土方さんの真似をしたら焦って。わかってるならやるなよまったく。
声はしたはずなのに、姿の見えない副隊長を探してきょろきょろとする山崎をもう一度呼んで(今度はちゃんと自分の声で)手招きする。


さん、どうかしましたか?」


目を数回瞬かせてから近づいてきて、私の隣に座る山崎に



「ねぇ、あの怖い怖い、女になんか興味ないぜ、みたいな副隊長に恋しちゃってる女の子が居たらどう思うよ?その子はどうしたらいいと思うよ?」

「へ?さん、いきなりなんですかそれは?」

「んー、例え話しさぁ。で、どう思うよ?」

「そんなこといわれても………」


いきなり聞いてみた。訳が分からない、というか、困惑?したような顔をしながら一生懸命考えてるこいつは実はかなりいい奴なのではないのだろうか。………………絶対苦労が絶えないだろう。憐れな。
なんだか頭をなでてやりたくなってきた。
それを行動に移してワシャワシャやっていると、


「やっぱり告白するべきなんじゃないでしょうかね?…………副隊長ー!」


そういって廊下の向こうへ向かって大声を上げる。
(その廊下の向こう、やってくるあなたは、)
隣でいきなり大声を出されたことと、それとは別の理由から、あたしの心拍数は急上昇。段々と、顔に熱が集まってくる。こんなの、あたしのキャラじゃないのに!!


向こう側からは鬼の副隊長、土方。
隣は、ニコニコしながら立ち上がり、今にも反対側の廊下の端へと消えていこうとする山崎。いい仕事をした、といわんばかりに笑ってやがる。(斬りかかりたくなるの、しょうがないよねぇ?)

おい、こら、ちょっとまて。ちょっとまて山崎。
例え話だって言ってんだろ!
山崎いぃぃぃぃ!!



「おい。今、俺を山崎が呼んだよな?なんだったんだ?」

「………。」

「オイ、どうした?」


しどろもどろな、冷や汗だらだらな私。
その私を覗き込む土方さん。
……どうか顔を近づけないで。心臓がおかしくなるから。もう既におかしいのが、さらにおかしくなるから。

真撰組、女隊士、
今、この時よりも、死と隣合せの戦場のほうがマシな気がして仕方ありません。(そりゃぁさ、そんなことはありえないんだけど!)(心臓はバクバクよ!?きっともうすぐ壊れる!)
えぇ、皆々様、どうぞ笑ってくれてかまいません。

あぁ、神様!これからはあなたを信じてもいい!
だから、どうにかしてください。この場から一刻も早くきり抜けたいのです。





そして、山崎を斬りに行きます。えぇ、必ず。




「お前、何時から気付いてたあぁ!!」
あんた、いい奴なの?ねぇ、ちょっと違うと思うんだけど!
私の感動を返して!!








ありえない奴


もう絶対に信じないぃぃ!!





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