(……もうちょっと、このまま…)






ぼーっとするの。
何かをするわけでもなく。
部屋の端っこで。
小さくなって、
ギュッと、ギュッと。
自分の体を抱きしめて。
ぼーっと。
ぼーっと。




最近の私はずっとこうしている。
日課になりつつあるのだろうか。




教室でも、そう、なんとなく。
部屋の端っこに行くと変な目で見られるから……たぶん。
端っこに行ったり、小さくなったりはしないけど。
それでもボーとしている。
授業中はノートをとる振りをしながら。
窓の外や、いろんな所を理由もなく見つめる。



放課後。
誰もいない夕日の差し込む教室で。
教室の端っこに椅子を持っていって。
ただただ。


ぼーっと。



ガラッという音と共に勢いよく開く教室のドア。


「…じゃん。……何やってんの?」


飛葉中のプリンセス。椎名翼。
本人にいうとかなりの勢いで怒られるらしいが、
そういわれても仕方のないくらい
可愛い顔をしている。
しかも、運動もでき、成績優秀。
サッカー部を作ったとか。
女の子にとって、ほおって置けない存在……らしい。
私には興味ないし。
制服姿のところを見ると、まだ部活に行っていないらしい。
委員会だったのだろうか。
走ったのか、少し、ほんの少し息が荒い。



「あぁ、椎名か。」


ぼーっとしてたんだよ。
そう答えようとして、彼の声に遮られた。


「お前……なんで泣いてんの?」


「…え?」


椎名に言われて、頬に手をやる。
微かに、だけど確実に濡れていたであろう自分の頬。
言われるまで、気付けなかった。
自分自身の涙。

あぁ、私ちゃんと泣けるのね。











「別れよう。…合わないよ、俺ら。」


一年くらい付き合っていた彼氏にそう言われた。
向こうから告白してくれて、


「いいよ。」


そういって付き合い始めて。
依存してるつもりも何も無くて。
ただ、一緒に居た。
アレを付き合うとホントに言うのかわからないけど。
唐突に来た終わり。
終わりも、始まりと同じで


「いいよ。」


そう言って終わった。
あっけなく。
お互いに背を向けて、
歩いていった。
振り返らずに。




『失って初めて気付く』

ドラマだっただろうか。
本だっただろうか。
マンガだったのだろうか。
その言葉の意味を、もっと早く
もっと早くに知っておけば良かったんだ。

あの人にしっかり依存してた。
あぁ、私ちゃんと恋していたんだ。
どうしようもないくらいに。
あの人が好きだったんだ。






何もせず、ぼーっとするなんて。
日課でも、癖でも、趣味でもない。
馬鹿な自分に嫌気がさして。
愚かな自分に嫌気がさして。
逃げ道を探してるだけ。













「……何があったか知らないけどさ。
 知りたくも無いけどさ。」

「椎名…?」

「たまには泣いたっていいんじゃないの?」


ポスッという音と共に、椎名の腕の中に閉じ込められる。
優しく。しっかり。
その腕の温かさに。
自然とこみ上げる涙。


「……こんなことしてやるの、……いや。だからだよ?」


(…あったかい……)

椎名が私の名前を呼んで。
鈍い訳じゃないから、その意味も理由も分かった。

(……もうちょっと、このまま…)

あの人を想っていないわけじゃない。
むしろ、気付いた今のほうが、よっぽど胸を締め付けている。
それなのに、椎名の優しさにつけこんでる。
そんなのは解ってる。
自分がどれほどずるいかということも。
自分がどれほど酷いかということも。

それでも。

それでも

今だけは。どうか今だけは。
こんなずるい私を許してください。
この優しさに、この温かさに、縋ってしまうことを。
椎名の優しさに、つけこんでしまう私を……







あとがき---------------
これって夢なのかなぁ……というか、
私の書いたやつってもしやこういうのばっかり?
名前読んでないし、(いや呼んでるけどね……)、
キャラでてこないし
ちっとも甘くないし。
どうしよう。

皆様こんなヘボを読んでくれてありがとうございました。

alice   2005.11.27

【配布元様】