肌寒い空気。白さを増していく自分の吐息。「この季節のミニスカはキツイ」と女子ならば誰でも思うであろうことを考えながら、は昇降口に一人、立っていた。



あぁ、この曖昧な関係が始まってから、幾日たったのだろう。
あぁ、この曖昧な関係は、幾日続くのだろう。



マフラーを巻きなおしながらそう考えたとき、今までの月日を思い返してみる。
それなりに経っているといえば経っている。しかしそうではないといわれてしまえばそうでないのかもしれない、……………なんとも微妙な、曖昧な月日だった。
まるで、今のこの関係のように、


そう、すべてが曖昧。





そんな曖昧の中。私はまた分からなくなっている。
好きなのか好きじゃないのか。

自分は、椎名翼を好きなのか?

まぁ、好きでなければ一緒に居るなんてことはありえないから、少なくとも好意は持っているんだろう。ただ、

ただ、
恋しているのかしていないのか。
愛せているのか居ないのか。


ねぇ、もしもわたしが恋しているのなら、愛しているのなら、また失いたくはない。翼、あなたが救ってくれたあの時のようにはなりたくない。
だって、もしもまたあの状況に陥ってしまったとき、あなたは傍にいないのだから。あの優しい体温は、力強い腕は、もう思い返すことも出来ないのだろうから。
ねぇ、どうすれば分かるんだろうね。

もう、………失くしたくはない。






?どうしたんだよ、暗い顔して。」

が顔を横に向けると、翼がの顔色をうかがうように立っていた。

以前、そう、初めてまともに話してから数日と経たずに二人は一緒に居るようになった。そして翼の人気ゆえに、は嫌がらせをされた。………その事実が判明したときの、そのときの彼の切れっぷりはすばらしかったらしいが……その後ぐらいからだろうか、今まで以上にのことを心配するのだ。今回も例によって強引な彼に、は考えていたことを打ち明けるのである。あの長い長いお説教はうけたくない。唯でさえ寒くて嫌な思いをしてるのだから。













「じゃぁ、少しの間離れていようか。きっと今は近すぎるからね。その間に、の答えを見つけてよ。」

話を聞いた直後、翼がにそう宣言した。
彼も思っていたのだろう。この曖昧な関係に終止符を、と。






一日目。唯なんとなくすぎてしまった。
二日目。ナニカ違和感を感じた。
三日目。違和感は次第に大きくなり、学校がつまらなくなってきた。


四日目。……―――気付いた。



初めてまともに話してから、私の隣には翼が居た。べつに今までの友達と話さないわけではない。ただ、一人で居ることはなかった。もともと必要以上に誰かとつるんで過すことを好んでいない私が。
そして、この三日間、たとえば休み時間だとか食事のとき、友達と会話をしている頭の隅では、ちゃんと翼のことを考えてた。
三日間、放課後一人残って、グラウンドを見ていたのは、翼の事を見ていたから。




(そっか。…そーゆーこと)

大丈夫、答えは見つかった。大丈夫、もう過ちは繰り返さない。
あのときのようなへんなプライドはもうない。大切なものは、大切な人は、もう失わない。






走った。今すぐに会いたい、話がしたい、…――この思いを伝えたい。
放課後になったばっかりの今の時間だ。きっと翼は部室に居るだろう。走れ走れ走れ、今までにない速さで。



サッカー部部室のドアを、急いであける。大きな音がしたが、かまってなんか居られなかった。





「おい!ドアくらいちゃんと普通に開けられないのかよ!!………って、?どうしたんだよ。少し離れていようって……」


驚いている翼に歩み寄る。まっすぐに目を見つめて。口から言葉がこぼれる、今一番伝えたい、驚くくらい素直な気持ち。



「好きだよ、翼。大好きだよ。」


その言葉が部室に響いた瞬間、翼の目が大きく見開かれた。
………ねぇ、ちゃんと答えを見つけたよ。

「遅くなってゴメンね。大好き、大好きだよ。」



であったころの自分からは考えられない台詞。変われたのは、きっとあなたに出会えたから。




「やっと言った。」

溜息。呆れ。でも浮かんでいるのは笑顔。

「遅くなった分と、今まで離れていた分、一緒に居ろよ。……もう、離さないからな。」





お互いの背中に回した腕は、とても温かかった。

大丈夫、もう見つけられた。
大丈夫、きっともう失くさない、離さない。

この胸の思いは、もう










刹那様、本当に遅くなってしまい申し訳ありませんでした。
ご期待に添えられたか分からない駄文ですが、相互リンクしていただいたお礼としてお納めください。
これからもどうぞ、末永くよろしくお願いいたします。
相互リンクして頂き本当にありがとうございました。
2006/09/02    alice
【配布元様】