「英士ー、明日晴れるかなあ?」 「飛行機雲が随分残ってるでしょ、雨だよ。」 「なんで飛行機雲が残ってると雨になるわけ?」 「飛行機はずっと上空を飛んでるでしょ。あの雲が10分以上残ってるって いうことは、上空の空気が湿ってるってこと。だから次の日は大抵雨が 降るんだよ。」 「へえ〜。」 また一つ、英士トリビアが増えた。 英士といると、不思議と学ぶことが多い。 そんなことを言ったら単にが馬鹿なだけとか言われた。 酷いなあ。それが彼女に言う台詞? 久しぶりに一緒に帰った。いつも英士は選抜の練習か、 もしくはユースの練習かで一緒に帰れることは滅多にない。 勿論、文句を言ったところで何もならないから黙ってるけど。 「ねえ、今度練習見に行ってもいい?」 「だ〜め。」 「いいじゃん、彼氏のカッコイイ姿を見に行くだけなのに。」 「動機が不純だからダメ。」 ちぇ、ばれたか。 英士の練習見に行くついでに英士の友達とか選抜の子で日頃の乾きを 癒そうと思ってたのに、どうも英士の勘は鋭いようで、すぐに考えてる ことがばれてしまうようだ。 「あ〜携帯が欲しい。」 「なんで?」 「すぐに英士と連絡取れるじゃん。」 「…俺携帯もってないけど?」 「え、そうなの?危ないじゃん、選抜の帰りとかさ。 親に持たされてたりしないの?」 「男だからそういう心配はないでしょ。」 「だって英士、美人だからさ、襲われたりとか…」 「…ない。あるわけないでしょ。」 今ちょっとこめかみぴくっとなった。怖いな〜。 女の私から見ても、スポーツしてるとは思えないほど色白いし、 アジアンビューティー(何だそれ)を思わせる端整に整った醤油顔。 そんなこと言ったらグーで殴られそうだ。 けど実際雑司が谷中ではファンクラブも設立されているらしい(結人君談) そうだよね、かっこよくてスポーツ万能で、ちょっとツンデレキャラ って、もてる対象じゃん!中学違う私は英士がどんだけ学校でもてて るわけとか全然わかんないわけだ。 嫉妬するとか以前に不安な気持ちが先に来るから、唯一一緒に帰れる ことを楽しみにしてる。あ〜、学校が一緒だったらよかったのに。 そしたらイチャイチャ学園ライフを堪能出来たのに。 「何一人で百面相してんの?措いてくよ。」 「女の子の歩幅にあわせるのが男でしょ〜!このデショ星人め!」 「何言ってんの。」 ふと、目の前にいるゲーセンに目が移った。 いいこと思いついた。 「英士、プリクラ撮ろーよ。」 「何で。」 「撮ったことないよね?記念に一枚。」 多分忠犬ハチ公みたいな顔してたのか、英士は珍しくすぐに 了承してくれた。こういうことは滅多にない。 だっていつも、大抵まず、何でって理由聞かれて、ダメ、とか、嫌だ、とか 言われて一方的に私が折れるしかないんだもん。 他の男の子ってこういうときどうなのかな? 女の子の言うこと聞いてくれたりするわけ? 英士はカッコイイから勿論女の子と付き合うの初めてじゃないだろうし、 っていうか私は初めてなんで英士以外知らないし。 って考えてたらまた英士先行ったー! 「入るの入らないの?」 「入りまーす。」 中は人がいっぱいで、制服やら私服やらとにかく自分達と同年代の子 がうじゃうじゃ。思わず逸れそうになったから後ろから英士の制服の 裾を掴んだ。すると、英士が左手で裾から私の手を離すようにした。 なんだ、やっぱ嫌がられたか、と思ってたら目の前に英士の掌が。 「え?」 「手。」 ほら、と差し出された。 「マジすか?」 「嫌ならいいよ。」 「繋ぐってば。」 英士の手は、少しひんやりしてて、やっぱり自分の手よりは 大分大きい。やっぱり男の子なんだな。 こういうことで一喜一憂してしまう自分ってやっぱ馬鹿ですか。 いいやこの際馬鹿で結構。 しばらくすると、お目当ての機械が見えた。 「あれ、あれにしよ。」 数ある中で選んだのは顔が綺麗に写るやつ。美白効果とかあって、 目の中にキラキラの星が入るとか、落書き時間が長いとか特典も たくさんあるのだ。いつもは人気が高くて人が並んでるからなかなか 撮れないのだ。今日はいつもと来る時間帯が違うせいか、どれも 人は並んでおらずあいていた。 「ちょっと待って。小銭にしてくる。」 「じゃー私待ってる。」 機械の横にある椅子に腰掛けて待つ。 両替の機械混んでるのかなー、なんて思いつつ。 しばらくしてもこないので、様子を見に行こうと立ち上がる。 「ねえ。」 ふと、後ろから声をかけられた。 声からして、英士じゃないことはたしかだ。 となると、一気にテンションは下がる。 「何?」 「ちょっと付き合わない?」 「悪いけど、人待ってるから。」 「君かわいいしさ、いいじゃんちょっとくらい。」 「結構です。」 見た目からして高校生か、もしくは大学生か。 ていうかゲーセンでナンパ?あんまり聞かないんですけど。 しつこい男は嫌われるってわかんないのかな。 しかも私の嫌いなロンゲだった。顔はまあまあかもしれないけど 第一似合ってないし、というか私には英士が!(そこ重要) 「ね〜。」 ゲーセンだからまわりはうるさいし、誰も見てないから助けても くれない。仕舞にはぐいぐい腕を掴んで引っ張り出した。 だから嫌だって言ってんじゃんか。もう泣きそう。 「ちょっと、人の女に何してんの?」 いつのまにか帰ってきた英士の姿見えた。 気のせいかもしれないが、英士は少し汗をかいてるように見えた。 「なんだ、彼氏持ちかよ。じゃあね〜。」 ナンパ男は、英士が来るとあっけなく去っていった。 なんだったんだアイツは。 「、大丈夫?」 「うん。な〜んか変な男だったな…」 「そうじゃなくて、何もされなかった?」 アレ、私ってば心配されてる?いつもだったらそっけなく あしらわれるのにさ。道でこけても大丈夫の一言すらないし。 大抵がどんくさいからだとか、余所見してるからとか、 自分が悪いことになってて。 「何にもないよ〜でも英士がきてくれてよかった。かなりしつこくて…」 次の瞬間、英士の腕の中にすっぽりと包まれていた。 英士の両腕が背中に回っていて、しっかりと抱きしめられている。 な、なんですかこの状況は。人ごみでこれはかなり恥ずかしいんですけど。 「え、英士…?」 「だから、嫌なんだよ。」 「何が?」 「練習見に来るの。が可愛いから心配なの。 他の男にとられやしないかこっちはひやひやするんだから。」 この状況で、可愛いとか言ってくれること自体奇跡に近いと 言っても間違いないと思う。 というか、そんな風に思っててくれたんだ。 そして、現在自分がいる状況が段々とはっきりしてきて、 ちょっと恥ずかしくなってきた。 「英士、わかったから、あのー、離してもらえる?みんな見てるし…」 「気にしないでいいよ。」 英士が気にしなくても私がするから! せっかくおいしいチャンス?だったのだが、あまりにもじろじろ 見られるもんだから慌てて英士の腕を剥がして慌ててゲーセンを出た。 ああ、せっかくいい機種でプリクラ撮ろうと思ったのに。 「英士のせいだよ?」 「いいじゃない。プリクラなんていつでも撮れるでしょ?」 「あーもう、わかってないなあ。あれは人気の機種なの! それに英士と二人で撮れるなんてそうそうないんだからね。」 怒り心頭のまま、じっと英士を見る。 「でも、英士の本音がちょこっと聞けて嬉しかった。」 「…何が。」 「選抜の練習見に行くのダメっていう、ホントの理由。 英士がヤキモチ妬いてくれるなんてさ、あんまりないし?」 「まあ、たしかにが来るといろいろ心配だしね。 自分自覚ないでしょ?結構人気なんだよ。」 「人気って何が!ねえ!」 「…見に来てもいいけど、フェンス越しね。」 答えてくれてないし。しかもフェンス越しって、そんなの蛇の生殺しじゃん! 「ええ〜!!生で触りたい、じゃなかった見たい!」 「ダ〜メ、危険だから。」 「何でよ〜、英士のケチ!」 でもま、いっか。それだけ心配してくれてるってことだよね。 私馬鹿だから勝手に解釈しちゃうよ、英士? 「に触っていいのも触るのも俺だけだからね。」 英士が蚊の鳴くような声で言ったことは勿論、の耳には届いていない。 ----------------------------------
相互記念夢。 甘い英士をひたすら目指したのですが見事に挫折いたしました。 なんかこうね、選抜の練習見に行きたいっていうヒロインちゃんを かわいいからダメだ、って言う英士が書きたかったんですよ(力説) それをものの見事に表現できてない私です、はい。 ----------------------------------- Elixirの李胡様よりいただきました英士夢です! 遅くなりましたが、本当にありがとうござます! いや、あのう本当にこんな素敵なもの頂いていいんですかね!? 英士が素敵すぎてちょっとー!!ぶふッッ(吐血)の勢いですよ! 本当にありがとうございました!これからもどうぞよろしくお願いいたします! 本当にありがとうございました! 200701.14 |