俺達、どこまでいくんだろうな。









「空青いねぇ。」

「………おぅ。」

「なんか気持ちいいねぇ。」

「………おぅ。」


は土手に座り、悲しくなるぐらい真っ青な空を見上げてる。
俺はその横に座って、若々しい緑の草を見つめてる。
なんだろな。
いままで、こんなことなかったのに。
今の俺らは、ちぐはぐで、アンバランスで、正反対だ。
どこが、とかじゃなくてどことなくだけど。



「………いつまでシケた面してんのさ。――――決まったんでしょ?大阪、だっけ?」

「………おぅ。」


俺の夢は、プロのサッカー選手になること。
一馬と、英士。
大切な親友、仲間と共に。



おめでたい。
その通りだろう。
夢が実現する。願っていたものに、望んでいたものに手が届く。
幸せだ。

心の底から笑っていた。
この空の青が、俺を祝福してくれているようで嬉しかった。
本当に幸せで、ずっと笑っていたのに……



なぜ、何故。今、笑えていないんだろう。



大阪にいけることが嬉しくないのか?

             ――――そんなわけあるか!願ってもないチャンスだ。


プロになりたいんだろ?

             ――――当たり前だろ!?


………寂しいのか?







「胸張りなさいよ。今までそのために頑張ってきたんでしょ?」

―――………寂しい、のか?
あぁ、そうなのかもしれない。

(置いて行くなよ。)

俺がこんなことを思うのは変だ。
居なくなるのは俺なんだから。この街から消えるのは俺なんだから。
なのに、な。

(行くなよ…、離れんなよ)



「英士と、一馬と、三人でずっとサッカーを続けて、世界に挑戦するんでしょ?」


この幼馴染とはなれることを、寂しく思っているのだろうか。
たぶん。………たぶんそうなんだろう。
ずっと一緒だった。
別れの、いま、この瞬間。
がなんだかに見えない。
違う人に、……………女になったみたいだ。
こんなことでうじうじしている俺よりもずっと大人に見えた。
寂しいのは、ガキのままなのは、俺だけ?



悔しい、寂しい、悔しい







「英士と、一馬と、三人でずっとサッカーを続けて、世界に挑戦するんでしょ?」







「……おぅ。するともさ。俺達はいつか頂点に立つのさ。」

夢をかなえるために。
お前に少しでも追いつくために。


「………やっとまともに喋った。」



その問いかけに答えただけなのに、は驚いたように目を見開いたが、次の瞬間、優しく微笑んだ。
また、だ。――…大人の女って感じ。きれいだ。


「しばらく会えなくなるのに、お別れがぶっちょうずらなままなのかと思った。」

「……なんだよそれ。俺がガキみたいじゃねぇか。」

ガキだけど。

「ガキでしょ。拗ねたように下向いててさ。………寂しい?」


図星だった。でも、なんだか素直に認める。


「………まぁな。少しだけ、な。」

「へ?」

「何だよ。驚くことか?……なぁ、、お前も寂しいのか?」

「…そりゃぁそうでしょう。離れちゃうんだから。」


そういってはまた笑った。苦笑、というべき笑顔だったけど。
今まで見てきた、一緒にいた、子供のころの面影が少し重なった。
変わってしまったように見えて、でも、やっぱりだった。




時がとまることはないから、は、俺と離れている間にきっとどんどん大人に近づくんだろう。
が変わるように俺も変われるだろうか。
………変わってやるさ。
いつかまた、俺がここに戻ってきたときに笑い合えるように。



「結人。………負けるなよ?」

「……おぅ!」


変わってやるさ。
変わっていくお前に、大人になってきくお前に近づくために。

変わってやるさ。
いつかその隣で、胸張って笑えるように。








alice     2006/02/19

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